これは、読むだけで大丈夫な、お金の話です。いくら払うかの続きを、アニメ動画づくりの実例で書きます。
すごい機能は、たくさんある
動画のAIには、驚くような機能がいくつもあります。アニメの文法の記事で書いたカフェの会話シーンを、店内の背景ごとまるごと生成してくれる力。口と表情が演技をするリップシンク。もっと高い画質で出す設定。どれも、本当にすごい。
でも、型の力の記事で書いたとおり、動画のAIは「クレジット」という持ち点を使って動きます。そして、すごい機能ほど、持ち点を多く使います。一番上等な設定を試した日は、たった3カットの実験で、およそ300〜400点が飛びました。全カットをその調子で作って毎週続けたら、月の持ち点では回りません。素晴らしいことと、実用になることは、別なのです。
タダの部分と、かかる部分を、分けた
最初にやったのは、工程を「持ち点を使う部分」と「使わない部分」に分けることでした。
数えてみると、意外なほど、タダの部分が多いのです。台本を書く。声を整える。文字や図の板を描く。できた素材を切って、つなぎ、組み立てる。ここは全部、自分のパソコンの中の作業なので、持ち点を使いません。持ち点を使うのは、絵と動きを生成する所だけ。
だから、生成した素材は使い回します。うなずき、歩き、振り返り——一度作った動きは素材庫にためて、次の回にも使う。生成のやり直しは減り、その分の持ち点が浮きます。
上等な設定は、ここぞだけ
生成する所も、全部を上等にはしませんでした。
- 試作は速い設定で、本番だけ品質側の設定で作る
- 画質はひとつ下でふだんは十分。最高画質は、連載の顔になる特別なカットだけ
- 図解や文字カードの場面は、生成せず自前の板で(前の記事で書いた「任せない」と、財布の上でも同じ判断でした)
すごい機能を知らないから使わないのではなく、知った上で、使い所を看板だけに絞る。あきらめではなく、配分です。
先に、配分を決めた
そのうえで、月の予算を決めました。実際の数字を書きます。月に使う持ち点は3,000まで、と自分で枠を決め、そのうち毎週の量産に2,200、新しい実験に800。そして停止の線も先に決めました。今月なら、残り100。そこまで減ったら、その月はもう作らない。
順番が、たぶん大事です。使いながら残りをちらちら気にするのではなく、先に配分を決めてから、使い始める。今月は仕組みを作る月だから追加もあり、来月からはこの枠で回す——そこまで決めてしまうと、あとは金額のことを忘れて、作ることに集中できました。家計と、同じでした。
折り合いは、負けではない
すごい機能を横目に、ひとつ下の設定で作る。ケチくさく聞こえるかもしれません。でも、1本だけ豪華に作って力尽きるより、変わらない仕上がりの動画が毎週届くほうを、私は選びました。
全部の機能を使いこなすことが、上手なのではありませんでした。どこで使い、どこで使わないかを先に決められること——それが、この道具と長く付き合う、実用の形でした。
