セミナーや対談を録音して、文字起こしにかけると、たいてい、そのままでは読めません。人名は毎回ちがう漢字に化け、専門用語は別の言葉にすり替わっています。
これを、手元で働くAIに整えてもらう。今日は、その頼み方の話です。手を動かすのは、文字起こしのテキストを渡すことだけです。
いちばん大事なルール:一言一句、残す
整えてもらうとき、私がいちばん強く言うのは、これです。
一言一句、すべて残して。勝手に要約したり、省略したりしないで。
「似た内容が続くから、まとめておきますね」——AIは、放っておくと、こういう親切をします。でも、これをされると、その人が実際に言った言葉が、静かに消えていきます。
直していいのは、助詞と、文法と、明らかな誤変換だけ。言い回しを「もっと自然に」書き換えることも、させません。「〜っすよ」のような話し言葉も、そのまま残します。
勝手に書き換えるのを防ぐのは、AIの新しさや賢さではありませんでした。「全部残す」という、たった一つのルールを、はっきり守らせることでした。
いきなり始めさせない
もう一つ、決めていることがあります。いきなり校正を始めさせない。
まず、AIに5つのことを報告させます。
- 全体で何文字あって、どんな構成か
- (スライド画像を渡した場合)そこから読み取った話者名・専門用語
- 誤変換していそうな箇所のリスト
- 相槌(「うんうん」など)を残すか、整理するか
- 長いときの、分けかたの計画
これを聞いて、こちらが「その方針でいい」と答えてから、はじめて校正に入ってもらう。走り出す前に、地図を見せてもらうわけです。
誤変換は、文脈と画像で直す
いちばん化けるのが、人名です。同じ名前が、一つの原稿の中で、何通りもの漢字に化けることがあります。
だから、スライドや資料の画像があれば、一緒に渡します。そこに正しい名前が書いてあれば、それを”正解”として、全部そろえてくれます。
そして、確信が持てないところは、むりに直させません。かわりに、「直すなら、こうか」という候補だけを、印(【 】)で添えてもらう。分からないことを、分かったふりで埋めない。これは、この連載でずっと言ってきた約束と、同じです。
整えるとは、きれいにすることではない
整える、というと、文章をきれいにすることだと思われがちです。
でも、私がやってもらっているのは、そうではありませんでした。その人が話した言葉を、そのまま、読める形にすること。整えても、その人の声が残っている。そこだけは、譲りませんでした。
