この記事は、これまでの連載——母艦、記録して、司令塔、プロンプト集——が、なぜどれも効くのか。その一本の理由を、まとめて書きます。読むだけで大丈夫です。
私は、あるとき考え方を、大きく入れ替えました。
賢くするのは、どちらか
AIそのものは、毎回のやりとりで、賢さが変わるわけではありません。そして、前回の会話を覚えていません。
だとしたら、賢くすべきなのは「AI」ではなく、「自分のフォルダ(母艦)」のほうだ——そう気づいたのです。
こう考えると、すっきりしました。
毎回のAIは、優秀だけれど、記憶のない助手。母艦は、自分が育てていく「記憶の本体」。第二の脳、と言ってもいい。
助手は、毎回入れ替わります。でも、助手が読む「引き継ぎ書」——つまり母艦——が良くなっていけば、毎回の助手の仕事も、良くなっていく。だから、育てる先は、助手ではなく、引き継ぎ書のほうでした。
ためるだけでは、育たない——3つの層
では、どうやって母艦を育てるのか。私は、3つの層で回しています。
第一層:ためる
学びや、判断や、気づきがあったら、決まった場所に書き足します。長くしません。一行から数行で、要点だけ。あとで読んで分かればいい。
置き場所は、あらかじめ決めてあります。AIへの頼み方の工夫はプロンプト集へ、記事のネタは記事の種のフォルダへ、というように。だから、迷わずに足せます。
(この「ためる」を一言でやってくれるのが、記録しての記事でした。)
第二層:整える
ためるだけだと、そのうち、古い判断や、重複や、矛盾が混ざってきます。
だから、ときどき——月に一度くらい——整理します。重複をひとつにまとめる。古くなった判断を新しくする。ためるのとは、別のリズムの作業です。
足すことと、整えること。この二つがそろって、はじめて母艦は”生きた状態”を保てました。
第三層:つなげる
一つの学びが、いくつもの場所に効くことがあります。
たとえば「相手の文法を、自分の文法に翻訳せずに理解する」という学び。これは、メールの返し方の学びであり、同時に、人の価値を引き出す仕事の核でもあり、記事の種でもありました。
だから、学びを書きとめるとき、「この学びは、どこに効くか」を、小さな目印(タグ)として一緒に残します。そうしておくと、あとで「この分野に効く学びを、全部集めて」と頼めます。バラバラの引き出しが、つながっていきます。
だから、待たなくていい
AIは、これからも新しく、賢くなっていくでしょう。
でも、私は、新しいAIが出るのを待つより、自分の記憶の本体を育てるほうに、時間をかけることにしました。そのほうが、確かに効いてきたからです。
この連載でやってきた、母艦を持つこと、記録を残すこと、司令塔の一枚を置くこと、プロンプトをためること。あれは全部、この「記憶の本体を育てる」ための、別々の道具でした。
助手が賢くなるのを待つのではなく、引き継ぎ書を、こつこつ育てる。それが、いちばん遠くまで連れて行ってくれました。
