AIを仕事で使いこなしている人を見て、私はずっと「頭がいいんだろう」「指示の出し方がうまいんだろう」と思っていました。
でも、自分でやってみて分かりました。違いは、そこではありませんでした。
この回は、1分のアニメにもしています。先に見ると、話の形がつかめます。
上手な人は、まず道具立てが揃っている。それだけでした。
この記事は、読むだけで大丈夫です。実際に手を動かす話は、この連載の後の記事で書きます。まずは「何を揃えるのか」の全体像から。
同じAIに、同じことを頼んでも、道具の組み合わせで結果はまったく変わります。私が最初に揃えたのは、3つだけです。
1. AI本体(考える相棒)
考えて、書いて、作業してくれる相棒です。
ここで、この連載全体にかかわる大事な区別を一つ。AIには、大きく二つのタイプがあります。一つは、チャット画面で文章をやりとりするタイプ(多くの人が使っているのはこちら)。もう一つは、パソコンの中のファイルを、AI自身が直接、読んだり書いたりできるタイプです。
私が使っているのは、後者の「Claude Code(クロードコード)」という道具です。この連載の後半で出てくる「設定」や「ファイル」の話は、この後者のタイプを前提にしています。今は「そういうタイプがあるんだな」で大丈夫です。
2. 母艦=自分のフォルダ(記憶の机)
これが、いちばん見落とされている道具です。
パソコンの中に、整理されたフォルダを1つ用意する。AIが読み書きする「机」です。専用のアプリでなくても、ただのフォルダで構いません。
なぜこれが要るのか。理由は一つです。AIの記憶は、消えるからです。
会話を閉じれば、AIはこちらのことを忘れます。だから、大事なものは自分の側(ファイル)に持っておく。そうすれば、次に「あのフォルダを見て」と言うだけで、続きから始められます。
このフォルダを、私は「母艦(ぼかん)」と呼んでいます。すべての作業がここから出発して、ここへ帰ってくるからです。この連載でも、これから何度も「母艦」という言葉が出てきます。
母艦は、最初は空のフォルダ1つでいい。中身は、使いながら育てていけます。
3. Chrome+AIの拡張機能(手と目)
AIに「手と目」を貸す道具です。
まず、言葉を二つ。「Chrome(クローム)」は、インターネットを見るためのソフト(ブラウザ)の一つです。そして「拡張機能」とは、そのChromeに後から足せる、小さな追加部品のことです。使っているAIの会社が公式に出している拡張機能を、Chromeに入れます。
これを入れると、自分がログインして見ているWebサービスの画面を、AIが見て、操作できるようになります。
ここで、大事な線引きがあります。
- AIが見られるのは、自分がログインして見られるものだけ。それ以上は覗けません。
- パスワードを教える必要はないし、教えてはいけません。
- 拡張機能が効くのはChromeだけ。たとえば、あるサービスを専用アプリで開いているとAIには見えませんが、同じものをChromeで開けば見えます。
3つが、連携して動いた日
言葉だけだと、ぴんと来ないかもしれません。実際に、この3つが一緒に動いた日の話をします。
私は以前、あるAIのサービスに、半年分・102本の会話を貯めていました。ところが、そのサービスには、記録をよそへ移す仕組みがありませんでした。手作業で1本ずつ写すには、多すぎる量です。
このとき動いたのが、3つの道具でした。Chromeで開いたその画面を、拡張機能ごしにAI(頭と手)が読み、母艦のフォルダ(机)が、ファイルとして受け取っていく。特別な契約も、裏技もありません。102本は、こうして手元に残りました。
3つの道具が、それぞれの役割で連携する。その”絵”が、このとき初めて見えました。
AIは、魔法ではない
やってみて分かったのは、AIは魔法ではない、ということでした。「その道具立てなら、そこまでできる」があるだけです。
逆に言えば、道具が揃っていて、頼み方が決まっていれば、私のような初心者の環境でも、思っていたよりずっと遠くまで行けます。
次の記事では、その「頼み方」を書きます。
