これは、読むだけで大丈夫な回です。少し進んだ話——AIと作った大事な書類を、誰が確かめるのか、という話をします。
一日で、仕組みを作った
私は撮影の仕事で、ドローンを飛ばします。ドローンには、国の許可や資格、飛行前の計画、そして飛んだ後の記録(飛び方によっては法律で記帳が義務づけられる、飛行日誌という帳簿)——書類仕事の山が付いてきます。
ある日、この「飛ばす前から、飛んだ後まで」を、AIと一日で一式の仕組みにしました。許可の台帳、飛行計画の下書きが出てくる型、日誌の記帳、人に渡す準備まで。夜には、ひと通り形になっていました。
でも、ここで手が止まりました。法律の絡む書類を、AIと私の二人だけで「できた」と言っていいのか。 私は法律の専門家ではないし、AIは間違えることがあります。
検品係を、呼んだ
そこで、AIを、使い分けるの記事で書いた役割分担を使いました。作ったのは、いつもの相棒(司令塔)のAI。それを、別のAI(検証役)に渡して、検品させる。この日は、合計3回検品に出しました。
結果を先に書きます。3回とも、こちらが見えていなかった急所が見つかりました。
検品①:書類は正しいのに、「今日」は飛べなかった
一度目の検品が突いてきたのは、思いもしない所でした。
許可の更新書類は、正しく記録できていました。ところが検品は、「更新の切り替わりに谷間がある」と指摘してきたのです。古い許可が切れてから新しい期間が始まるまでの十日ほど、一部の機体はカバーが無い。そして——まさに検品を受けたその日が、その谷間の初日でした。
書類を正しく整理することと、「今日、飛べるか」は、別の問いだったのです。知らずにその機体を飛ばしていたら、国のルールで必要な手続きを欠いた飛行になり得ました。
検品②:たった1行が、法令違反に直結していた
二度目の検品は、書類の中の定義の1行を捕まえました。
私たちは「国に記録の義務がある飛び方」の説明を、1行、狭すぎる言葉で書いていました。その1行のままだと、ある機体の飛行が「記録しなくていい」側に誤って分類され、義務の帳簿に漏れが出る——つまり法令違反に直結する誤りでした。
長い書類の中の、1行です。作った本人たちは、何度読み返しても、たぶん気づけませんでした。
検品③:「分からない」と書いたら、答えが返ってきた
三度目が、いちばん印象に残っています。
飛行日誌は、人に付くのか、機体に付くのか。二人で機体を共有する場合の帳簿の分け方に、私もAIも自信がありませんでした。そこで、取り繕わずに「ここは自信がない」と書類に印を付けて、検品に出しました。
検品は、その論点にまっすぐ答えてきました。日誌は人ではなく、機体に付く。人で分けると、共有機の記録が二冊に割れてしまう——と、法の建て付けから正してくれたのです。
分からない所を分からないと書いて出すほうが、検品の精度は上がる。隠すより、印を付ける。これは人間の世界の検品と、同じでした。
重要書類は、本人以外の目を通す
三度の検品が止めてくれたのは、恥ずかしい間違いではなく、実害でした。無許可飛行、義務の帳簿の漏れ、記録の分裂。どれも、起きてから気づく類のものです。
覚えたことは、一つです。重要な書類は、作った本人以外の目を通す。 AIと二人で作ったなら、三人目もAIでいい。作った本人(AIを含む)は、自分の間違いに気づけない——それも、人間の世界と同じでした。
