「あなたは、何の人ですか」
名刺交換のあとで、こう聞かれたとします。
肩書きは答えられます。会社名も、業種も。
でも、答えたあとに、小さな引っかかりが残る。
いま口にした言葉は、本当の自分を表していただろうか。
この回は、1分のアニメにもしています。先に見ると、話の形がつかめます。
経験はある。技術もある。実績も、それなりに積んできた。
なのに、それを一言で言おうとすると、言葉が急に痩せてしまう。
プロフィールを何度書き直しても、どこか借り物のように感じる。
こんな感覚に、覚えはないでしょうか。
私は16年、専門家や経営者のマーケティングを手伝ってきました。
その中で、「価値がない人」には一度も会ったことがありません。
ただ、「価値がまだ言葉になっていない人」には、数えきれないほど会ってきました。
面白いのは、経験が豊かな人ほど、一言で言えなくなることです。
駆け出しの頃は、言えたはずなのです。「◯◯をやっています」と。
それが20年、30年と続けるうちに、仕事の幅が広がり、例外を扱い、
人に頼まれて始めたことが本業の隣に育ち――
「どれを言えばいいのか」が、分からなくなる。
つまり、言えないのは、足りないからではありません。
多すぎるからです。
私は、この状態を「点と線と面が、まだ繋がっていない状態」と呼んでいます。
過去の経験の一つひとつは、点です。
あの仕事も、あの失敗も、なぜか続けてきたあの習慣も、全部が点。
点は、それぞれ別々の場所に散らばって見えます。
でも、点をいくつか並べてみると、時間を貫く軸が見えることがあります。
「自分はいつも、これをやっていたのか」という線です。
線が何本か見えてくると、その線たちが交わる場所が現れます。
それが、面。自分の核です。
一言で言えるのは、本当はこの面だけです。
だから、点のまま「一言で言おう」とすると、苦しくなります。
どの点を選んでも、他の点を切り捨てた気がするからです。
一言にならないのは、選び方が下手なのではなく、
まだ面が見えていないだけなのです。
小さな一歩を、ひとつだけ置いておきます。
実績の年表を作るのではなく、
「なぜか捨てられなかったこと」を3つ、書き出してみてください。
仕事でなくても構いません。人から見たら無駄に見えることでも。
繋がりは、探さなくていい。
点は、並べるだけでいい。
線は、あとから勝手に見えてくることのほうが多いからです。
自分の価値を一言で言えないことは、欠けている印ではありません。
点と線と面が、まだ繋がっていないという印です。
そして、繋がっていないものは、繋げることができます。
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